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尿膜管遺残

 胎児期の尿膜管は通常退縮しますが、これが残ってしまって瘻孔や嚢胞、憩室を形成した状態です。感染を繰り返したり、発がんの報告もあるため、手術が推奨されています。

図1 尿膜管遺残症の病型

 

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どんな症状があるの?

 お臍から膿や尿がでてきます。お臍から下腹部にかけての痛みや発熱があります。

図2 お臍から血膿が出たり、赤く腫れたりして痛みます

図2 お臍から血膿が出たり、赤くはれたりして痛みます.jpg

どんな治療をするの?

 抗生剤や切開排膿などで感染が治癒した後に手術をします。高校生以上と、中学生以下でも検査を頑張れる症例は術前に泌尿器科で膀胱鏡検査をしてもらって尿膜管と膀胱との連続性を確認します。中学生以下で外来検査が怖くてできない症例は手術中に眠ってから膀胱との連続性を確認します。
 手術ではおへそから膀胱までの尿膜管を摘出します。膀胱側をどこまで取るかは議論されており定まった見解はありませんが、当科では膀胱鏡や尿路造影で尿膜管と膀胱との連続性がないことを確認して膀胱と尿膜管の境目を切離ラインとしています。
 以前は下腹部正中縦切開で手術していましたが、近年は腹腔鏡手術が一般的になっています。当科では単孔式腹腔鏡下尿膜管切除術を施行しています。

図3 腹部CT検査やMRI検査でお臍から膀胱につながる病変を確認します

図3 腹部CT検査でお臍から膀胱につながる病変を確認します.jpg

単孔式腹腔鏡下尿膜管遺残手術

 お臍から膀胱との境目までを、お臍の傷だけで摘出します。ポートを追加することもあります。

図4 手術の様子

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  • お臍をくりぬくように紡錘状切開して開腹します。

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  • 臍からできるだけ膀胱側まで尿膜管を剥離します。

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  • 汚染予防に袋にお臍を収納して腹腔内へ落とし、ラッププロテクターを装着します。

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  • お臍に3つポートを入れて腹腔鏡手術を開始します。

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  • 炎症の影響で、尿膜管におなかの臓器が癒着していることがあります。この症例は尿膜管に沿って大網が炎症性に癒着しています。

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  • 尿膜管を膀胱側へ剥離していき、膀胱に生理食塩水を注入して膀胱との境目を確認し、結紮切離します。
    膀胱との境目はどこまで切除するかについては一定の見解はありませんが、当科では膀胱鏡で膀胱との連続性がないことを確認して膀胱近傍での切離にしています。

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  • 癒着防止フィルムを貼付して、お臍の形を整えて閉創します。

図5 摘出標本

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摘出標本の病理組織学検査で膀胱側内腔組織の有無、尿膜管癌の有無を確認します。

手術のあとはどう経過するの?

 術後の傷はお臍の中に隠れて目立たなくなります。傷が小さいため術後の痛みが少なく、回復が早い利点もあります。術当日から歩いてトイレに行き、経口摂取を開始します。術翌日からシャワー浴可能です。術後2日で退院していただきます。膀胱と交通があり膀胱部分切除が必要な場合は数日間尿道バルーンカテーテルの留置が必要なため入院が長くなります。
 2021年10月から2024年1月までに手術を施行した10症例について示します。全例膀胱との交通がない症例でした。

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図6 手術の傷はほぼ分からなくなります

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30代男性 術後2週目
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10代女性 術後3か月目

 当科での手術を希望して、大阪府内だけではなく鳥取県や兵庫県など遠方の患者さんも来院されています。遠方の患者さんは術前検査を地元の病院で施行するなど、できるだけ通院回数が少なくなるようにしていますのでご相談ください。

文献

 1)大野耕一、他:尿膜管遺残. 小児外科52:1040-1043, 2020