停留精巣
精巣は胎児期におなかの中から鼠経管を通って陰嚢内に降りてきます。この下降がうまくいかずに途中で止まってしまうと停留精巣になります。
図1 停留精巣の位置
陰嚢の中に精巣を触れない時は停留精巣の可能性があります。停留精巣を放置すると、精子を作る細胞が少しずつ機能を失って数も減ってしまいます。また、精巣の癌になる危険性が高くなることが報告されています。
乳児検診で停留精巣を指摘されたときは速やかに小児外科を受診して下さい。
どんな治療をするの?
生後6か月までは自然下降することが期待できるため、外来で経過観察します。1歳までに自然下降しなければ手術を予定します。
治療の基本は手術で精巣を陰嚢内に固定することです。手術の時期は1歳前後から遅くとも2歳までに手術をするよう推奨されています。当院では小児外科専門医が日帰りで停留精巣手術を行っています。 自然下降を促進する目的でホルモン薬を投与する方法もありますが、一般的ではなく当院では行っていません。
精巣固定術
精索を延長して精巣を陰嚢底まで引き下ろして固定します。鼠径部と陰嚢の2か所を切ります。
- 図2 手術の様子
- 図3 手術の傷はほぼ分からなくなります
停留精巣は、たとえ適切な治療がなされても将来不妊症や精巣腫瘍発生の可能性は残ります。外来で経過観察していきます。
移動性精巣
寒い時や緊張した時に精巣が上下して陰嚢内に精巣を触れたり触れなかったりすることがあり、移動性精巣と言います。正常な筋肉反射で、思春期前に陰嚢内に落ち着くので精巣固定術の適応になることは基本的にはありません。
しかし、対側に比べて精巣が小さかったり、陰嚢が委縮して精巣がいつも鼠径部にあるなどの症状があれば手術の適応になることがあります。